エンディングノートの選び方
「エンディングノート」、随分と有名になりましたね。
熊本県内の調査ではありますが、2017年5月公益財団法人 地方経済総合研究所による意識調査によると、77.5%もの方がエンディングノートについて知っている・聞いたことがあるようです。(「終活」に関する意識調査はこちら)
一方で、既に作成した人はというと……3.7%。
圧倒的な格差です。
理由は色々とあるでしょう。
先ほどの調査では「なかなか始めにくい」「きっかけがない」、さらには「言葉で伝えているので必要性を感じない」という意見もあったようです。
確かに終活は後ろ向きな印象が強いですし、いざエンディングノートを書こうと思っても種類が多くてどれを選べばいいのか分かりにくいのが現状です。
とはいえ、書いていなくて困ることはあっても、書いてあって困ることはないのがエンディングノート。
日頃から言葉で伝えておくことはとても大切なことですが、いざという時に「そう言っていた」「そう聞いている」だけでは周囲の人々が納得できない可能性もあります。
残される家族のために希望を伝えておいたはずが、その家族が疑われ揉めてしまうような事態になってしまっては本末転倒です。
単に「本人がいつも言っていた」よりも、「このエンディングノートに本人がちゃんと書いてある。日付も新しいから今でも希望している(最後まで希望していた)はず」と示せた方が、自分自身も残される家族も安心です。
そんな役立つエンディングノートを、まずは書き始めていただくために。
行政書士みけねこ事務所の終活行政書士萩原が、エンディングノートを選ぶ上でぜひ参考にしていただきたいポイントをご紹介します。
まずは直感!
書店に行けば数多くのエンディングノートが置いてあります。
とりあえず片っ端から手にとってみてください。
全部を読み込む必要はありません。
パラパラとめくっていくだけで大丈夫です。
そして……
「なんとなく見た目が気に入った」
「なんとなく持った感じがしっくりくる」
「なんとなく読みやすそう」
「なんとなく興味を惹かれる項目があった」
というように、なんとなく直感でビビっと来たノートこそが、あなたにとって書きやすいノートです!
エンディングノートもやはり道具。
道具は使いやすく、そして愛着が湧いてこそ、自ずと使いたくなるものです。
お気に入りのノートなら、書く気力云々など言う間もなく、用がなくてもついつい開き、常に身近に置いておきたくなるでしょう。
……となるのが理想ですが、これではポイントも何もありません。
もう少し詳しく見ていきましょう。
(細かすぎて逆に分からない、という場合は直感勝負!です)
著者は誰か
世に多くあふれるエンディングノートも、基本的には誰かが作り、編集しているもの。
その“誰か”がどんな人かによって、当然中身にも差が生まれてきます。
弁護士の方が書けば、トラブルを未然に防げるように。
行政書士の方が書けば、手続きを見越したものに。
医療関係の方が書けば、医療の希望について手厚く。
介護関係の方が書けば、介護の希望について手厚く。
女性誌関係の出版社なら、「自分らしさ」にこだわった1冊に。
もちろん全てがこの通りになるわけではありませんが、背表紙ばかり並んでいる中で最初にどれから見るかの参考にしてもいいでしょう。
大きさ
「エンディングノート」と言っても、新書判からA4判まで(あるいはその範囲外も)あります。
ノート自体が大きい方が書き込むスペースや文字も大きい場合が多いです。
が、常に身近に置いておくなら、場所を取る大きいものより小ぶりなものの方が使い勝手がいいかもしれません。
書店ではノートと名がつくだけあって日本で普及しているB5サイズが多いのですが、より大きな/小さなサイズを検討してみるのも面白いです。
ページ数
ページ数が多い方が、なんとなくお得な気がする……。
そう思って買って間もなく、厚さが嫌になって急に書く気力がなくなってしまっては意味がありません。
ページが少ない方が書くための敷居が低い場合もあるでしょう。
バランスが大切です。
カバー
いわゆる表紙のカバーに加え、透明なカバーがかかっているノートもあります。
中身には関係ありませんが、汚れを気にせずどこでも書けるメリットや、透明カバーの隙間に書類などを挟むといった使い方もできます。
大切にし過ぎて書かなければ意味がありませんからね。
付録
ノートの中には、巻末などに付録がついている場合もあります。
簡単な遺言作成キットや、CDなどの小物収納ケースなど様々。
もちろん大切なのはノート本体の中身の方なので、付録だけに目を取られすぎないように気をつけてください。
項目の数
ページ数とも少し被るかもしれませんが、ページだけなら解説部分の厚みでも差が出てきます。
項目の数は、「自分の経歴」「財産について」「葬儀の希望」など、記す内容の種類の多さのこと。
ノートとはいえ、それぞれに掲載された項目・枠に従って書き込んでいくのが基本的なエンディングノートなので、一体どんな項目が掲載されているかで書き上げたノートの内容が変わってきます。
医療や介護などの基本的な項目はどのノートも大抵同じなのですが、他のノートにはあまりない項目を掲載されているものや、同じ項目をより充実させているものなど様々です。
ペットについての項目、パソコンやスマホ関連のID・パスワードを記載する項目、自分の好きなものや大切なものを書く項目、といった種類。
同じ葬儀についてでも、葬儀社や家族葬などの簡単な希望だけ書くものから、香典や棺の素材についてまで希望を記しておくようなものまで。
見比べてみて、自分が書きたい項目がきちんと載っている・充実しているノートを選びましょう。
解説
エンディングノートを書くためには、知識が必要となる項目もあります。
選択肢について、どれがどんな意味・内容のものなのか知らなければ選べません。
後見やリビング・ウィルと言われても、どんなものか知らなければ希望も何もありません。
そこで、市販のエンディングノートの多くは用語や制度についての解説部分を設けています。
これならエンディングノートを1冊手に入れれば、迷うことなく書き始められ……ればいいのですが。
エンディングノートのおまけ程度では分かりにくかったり、逆に解説が多すぎてノートが厚く書きにくかったり……。
ノートと一体となった解説で十分なのか、それともノートとは別の本やセミナー、専門家への相談などで情報を手に入れるのか。
自分の書き方に合わせて選んでみましょう。
開きやすさ
エンディングノートは“ノート”であり、単なる“本”ではありません。
書き込むことが大切です。
ところが、エンディングノートの中には開きにくく書きにくいものもあります。
文具ではなく単行本として扱われているものが多いためでしょう。
特にハードカバーのものは、見た目はいいのですが開いて書くのがとても大変です。
書店で実際に書くことはできませんが、開き具合を(ノートを傷めない程度に)確認することも大切です。
ノートそのものが書きにくかったら書く気力も削がれてしまいます。
色
「直感」でも触れましたが、見た目は大切です。
白黒のページをめくるより、色とりどりに彩られたページをめくる方が、なんだか楽しくありませんか?
私事ですが、資格試験など個人的にあまり気の進まない本を読む時は、二色刷りよりなるべくフルカラーのものを選ぶようにしていました。
表紙もそうですが、こうした所で意欲を上げることも大切です。
文字の大きさ
まず、小さな文字では読む気力が湧きません。
頑張って書いたとしても、今度は読む人がちゃんと読んでくれない可能性もあります。
先ほども少し触れましたが、あくまでも書籍の単行本として出版されているエンディングノートの場合、小さめなサイズに細かい文字で書かれているものも中にはあります。
日付
意外と気にしている人が少ないのが、ノートにある日付を書く欄の多さ。
表紙や冒頭に一箇所しかないノートもありますが、できれば各項目ごとに記入日を書けるものが理想です。
(中にはページ毎、欄毎に日付を記入する場所があるノートもあります)
ローマは一日にして成らず。
エンディングノートも1日ではなかなか書けません。
ということは、ページによって記入日が変わってくることもあり得ます。
いざという時、一体本人がいつの時点で希望していたのかが重要となる場合があります。
人の心は移りゆくものです。
書き始めた冒頭では「海に散骨するのもいいかなぁ」なんて家族に話していても、いざ書くときには「やっぱりお墓に入れてほしいな」と変わっていることもあります。
「たしか散骨して欲しいって言っていたな」「でもノートには埋葬して欲しいって書いてあるよ」なんてことも起こりえます。
そんな時、一体いつ希望を書いたのかを記しておけば、どちらの意思が最新のものか伝わるかもしれません。
また、将来認知症などで判断力がなくなってしまった場合、日付によって発症前に記した希望だと残しておくこともできます。
前向き度
エンディングノートといえば後ろ向き……な時代はすでに過去。
これからは前向きな気持でエンディングノートを活用する時代です。
介護・医療・葬儀・埋葬……。
これらを決めておくことは自分のためにも家族のためにも大切なことですが、本当に「エンディング」の部分だけ考えているのはとても辛いものです。
エンディングノートが書けない、書きたくない理由の多くはここにあるのではないでしょうか。
ノートによっては、自分自身のことについて書く部分が多いものがあります。
経歴はもちろん、今までの楽しかった思い出を振り返ったり、好きなことを書き出してみたり、家紋や家訓についてまとめてみたり……。
すると自然と、次はあそこに旅行に行きたい、今のうちにこれを趣味として始めてみたい、家の歴史を調べてみたい、といった将来の行動に結びつきます。
エンディングノートは単なる終わり支度だけではなく、将来の生き方を考えるためのたたき台としても使えます。
また、入院などのもしもの時全般で役立つノートもあります。
普段から役に立つノートであれば、書く意欲も湧きやすいですね。
中には本当に「エンディング」に関する項目しかないノートもあります。
取り急ぎ備えたいならともかく、せっかくエンディングノートを手に入れるならできるだけ活用できるものを選んだ方がお得です。
いざノート選びへ!
一番大切なことは直感……もとい使いやすさです。
本当に使いやすいノートであれば、普通のノートに自分で項目を書いてエンディングノートとして使ってもいいのです。
ルーズリーフ(ページの差し替えができるもの)にすれば、途中で項目を足したり差し替えたりすることもできますからね。
何はともあれ、繰り返しになりますが、書か(書け)なくては意味がないのがエンディングノートです。
何が使いやすいかは人それぞれ。
できるだけ色々なノートと比べてみることが大切です。
もし書いてみて、なんだかしっくり来なければ、新しいノートに変える勇気も必要です。
エンディングノートは何度でも書き直すことができます。
2冊目からは別のノート、という手もあります。(もちろん最新版だと分かるようにしてください)
ぜひ、自分だけのエンディングノートを手に入れて&作ってみてくださいね。
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